【解説】特別支援学級での日本語指導
平成2年に入管法が改正され外国人児童生徒が増加する一方の数年間、学校現場はその対応に大変な苦労をしていました。日本語が全く分からない子どもたちを前に授業することになった教員は、授業の進度も考えて日本語指導を別室で能率的に行おうと考えたのも自然です。これが日本語教室の起源です。
この時に、新規に別室を用意して教員が指導に当たった学校もありましたが、既存の「別室」と言えば特別支援学級であるケースがほとんどでした。そこには常に教員もいますので、ここで通常の特別支援学級授業の傍ら日本語個別指導を行う光景がたくさん見られました。
また、外国人児童生徒が実際に日本語を習得するスピードは個人差が大きく、時には何か障害があるのではないかと思ってしまうことあります。特別支援学級での日本語個別指導のしやすさに加えて能力や学力の遅れを考えると、常に特別支援学級で過ごすまたは正式に就学指導委員会を経て入級となる外国人児童生徒が出てきました。
しかしこの考えは根本的に正しくありません。先に書いたように彼らが日本語を覚える速度は個人差が大きく、そこには学校での指導や本人の能力だけでなく、家庭環境や文化面の不適応問題も影響しています。裏返せば、本来の必要性で特別支援学級に入級が必要な児童生徒の割合は、他の児童生徒に占める割合と同じ程度しかないと言えるのです。
小学校で特別支援学級に入級しそのまま中学校に進学すると、学校生活の実態と本人の成長(学力を含め)の間に大きな隔たりが生じます。また、成長と共に周囲と築くべき社会性についてもその可能性を奪ってしまうことになります。卒業時の進路選択においてはその影響が顕著に表れます。
学校現場の実情は本当に大変です。学校によっては日本語を個別指導する場合に特別支援学級を選択するしかない状況もあるかもしれません。その場合は正式には入級させないことと、ある程度の日本語を身につけたら目的達成と判断し出来る限り早い機会に在籍学級の生活に戻すこと、もしくはほかの個別指導を設定することが大切です。